お山歩日記2006「鹿島槍ヶ岳〜トリプル爺とひと味違う少年の巻き〜」

目的山域  扇沢〜爺ヶ岳〜鹿島槍ヶ岳(往復)
日時 8月4〜5日
参加者 ノリヒコ、リツコ、ハヤテ、トシオ

2年程前から、計画に上がるものの実現できなかったのがこの鹿島槍ヶ岳だ。

後立山南部にあり、かの深田久弥が愛した美しき双耳峰の山である。

イメージとしては、縦走で時間がかかりそう。なので、子連れではチョッと。

昨年の南アルプスの経験から、今年のテーマとしては、山小屋のいい山。

では、富士山は問題外でやはり北アルプスだろう。子供も成長した事だしOKに違いない。

という訳で、家族登山も妻は、体力不足、高校生になった娘はバイトに忙しく不参加。

息子と義妹のリツコ、それに東京からノリヒコ。計4人の厳選された先鋭達(?)だ。

前夜9時、和具出発。一本化された高速伊勢&東名阪道に乗り、御在所SAで恒例のうどんタイム。「今年の僕はひと味違うぜ!」と宣言していたハヤテは、車に乗り込むや否や爆睡に入り、SAで起こすとパッと目覚め、肉うどんをペロりとやっつけた。(ちなみに肉がバラ肉に戻りお勧め)再び車に戻るとまた爆睡。この食っちゃ寝を、中央道の駒ケ岳SAと長野道の安曇野SAで繰り返した。恐るべし若造。

安曇野SAで仮眠を取りながら、4時にノリヒコと待ち合わせる。これは注告だが、眠気覚ましのドリンクは深夜にはダメだ。まず気持ち悪いし、逆に仮眠の邪魔になる。

時間になっても姿を現わさないので電話すると、彼もこのSAで仮眠していたらしい。残業の後の強行軍でヘロヘロになりながら運転。途中から記憶が無いらしい。別の意味で恐ろしい。豊科インターで降り、大町を目指す。途中長野県地図を忘れたことに気が付くが、

2年前に来たルートなのでOK。6時前、無事扇沢にたどり着く。

前回来た時は、暗くて気づかなかったが、扇沢駅の手前1K手前に橋を挟んで駐車場がある。一度扇沢駅で用を足し、早速準備に入る。一味違うハヤテには自分の持ち物は全て背負わせる事にした。どうか荷物が増えないように・・・

後立山山脈南側の縦走路の入り口。その登山口は、標高1300m。今回の最高標高である鹿島槍ヶ岳は2889m。その高度差約1600mを2日かけて往復するのが、今回の山旅だ。6時10分出発。金曜だというのに結構人がいる。にぎやかになりそうだ。

登山口 ケルン

登山口の標識を扇沢の流れを横目に、樹林帯に入る。いきなり結構な急登。樹林を縫うようにしてせっせと高度を上げる。年々徹夜登山の出だしはきつくなる。一汗かくまでは他人の体みたいだ。一歩一歩が重く、牛歩の如く今回も大丈夫と自分に言い聞かせながら体を押し上げる。登山全体の中でもっともシンドイ時間だ。1時間程で、ケルンに至る。少し休憩。見上げ首稜線に小さく山小屋が見える。左下に扇沢駅と大駐車所が見える。左上に目を上げれば針の木岳から続く、黒部ダム手前の稜線がくっきりとその山容を主張する。真っ青な空、日が高くなるにつれ気温も上昇。サングラスを忘れたことを後悔する。

「種池山荘だ。そこまで行けば、稜線に出る。そこまでが勝負であとは楽勝。」とハッパをかける。見え隠れする山荘を目標に急斜面を登る。

登る前から、元気だったハヤテはいまだ衰えることを知らず、知らず知らず後ろから煽られている様で、ペースが上がってしまう。去年も3時間ぐらいは調子よく歩いていたが、

今年は果たしてどうなるだろう。

ケルンから更に1時間。次第に足元が土から岩の自然の石畳となる。山の西側斜面を巻くようになると登山道はなだらかになり、景色を楽しむ余裕がでる。

雪渓 立山を望む

「水平道」とか「石のベンチ」とか高度は上がらないが、沢から時折吹き上がる冷風が助けとなる。「落石に注意。静かに少人数で渡って下さい。」という看板が現れる。すると、次から次えと1人通るのが精一杯の斜面道に、小学生の団体が湧き出した。ヘタすると滑落しそうな斜面の山肌にへばり付く様にして道を開ける。すると、ワイワイと楽しげに話しながら30人位のにぎやかな団体は、看板と関係なく通り過ぎるのであった。

斜面の中央に雪渓が張り出し、そこを削って道が付けてある。

1m幅の雪道は冷気が上がり、気持ちいい。思わず氷を削り顔を濡らす。

谷に片面切り立った道をしばらく歩くと、急斜面になる。

降りてくる親切な女の人が、「もうひと頑張りよ。」とハヤテに声をかけた。

ここまでは、まぁありがたい情報だったが・・・・

「上の山小屋付近で、雷鳥のかわいい親子を見たわ。運がよければ会えるわよ。」

何とまぁ!?最近非常に相性の悪い奴等に出会ってしまうのは、危険だ。

みんなで顔を見合わせ、もしいても見ない様にしようと確認をとる。

したたる汗を拭い、もう少しと励まし登れば、階段が現れひとの話し声が聞こえてくる。すると、目の前にドーンと赤い屋根の種池山荘があらわれる。標高2450mようやく稜線だ。

すると、これもまたドーンと立山連峰が目に飛び込んでくる。

右に目を向ければ、これから向かう爺ヶ岳が聳え立っている。

小屋の名前の種池は我々の進行方向と逆方面にある小さな池から名づけられているらしい。

時間をチェック。AM9:15.約3時間経過。なんとコースタイムを1時間短縮した。

話す隣で爺さま方が、若いのはスゴイと感心していたが、昨年までは、コースタイムの1・5倍の時間がかかっていたので、この一年のハヤテの成長に親として感慨深いものがある。

50人程がたむろする、小屋前でスペースを見つけて休息だ。最近は何処でもお馴染みだが、携帯で写真を撮る若者の姿。そういえば、あまり年寄りは携帯写真を撮らない気がする。私も若者とは言えない年齢だが、電波がとぶ状況では思わず写メのために携帯を・・・

アンモニア臭が充満するトイレで、用を足し、腹にお握りを補充。ハヤテ、リツコは山小屋バッチを購入。1L 100円で水を補充。取り巻く状況は昨年とは違う事は分かっているが、非常に良心的な値段設定に微笑みが浮かぶ。担当の若い姉ちゃんが、この水は谷から吸い上げた湧き水だと教えてくれる。おかしなもので、それだけで水が美味しく思える。

種池山荘 爺ヶ岳

Am9:45.準備が出来たところで、再び行軍開始。

目の前の爺ヶ岳に向かう道が、緑の中にくっきりと描かれている。

約200mの登りだ。遠目に見ると結構ありそうだ。

爺ヶ岳は、南峰、中峰、北峰の3つの連なりで、黒部側斜面はなだらかなれど、信州側は険しい非対象稜線だ。そして信州側の山肌は、春になると「種まき爺さん」と呼ばれる雪型が現れる事から、爺ヶ岳と呼ばれたらしい。白馬や各地の駒ケ岳と同じだ。

ハイマツの中を少し登ると、爺ヶ岳の左に目ざす鹿島槍の双耳峰が出現。

振り返ると、真っ青な空のグラディションの中に剣岳の雄姿が浮かび上がる。あまりの美しさに寒気がする。

剣岳 鹿島槍ヶ岳

すると、いきなり電話がなりだし、飛び上がる。携帯は通じると理解していても実際は別世界いるので、よもや電話がかかって来るとは思ってなかった。でも、相手は山にいることを知らなければ、普通のことだけど・・・。妙に慌てて出れば、友からの仕事関連の内容で非日常世界では、違和感がありあり。恐縮する友に、感動を押し付けるように目の前の光景を説明するが、果たして伝わったのだろうか?いくら山登りしていてもあまり高山に登らない人には、もしくは山に登らない人には、この空気と色が違う世界は創造できないだろう。このすばらしい異世界を体験すると、山にハマッテしまう。

稜線に出ると、後は楽勝と説明してはいたが、実際は目の前にあるのになかなか近づかない。高度が上がるにつれ、後方に穂高連峰の山並みが現れ、そして槍の雄姿が浮かぶ。鹿島槍の手前に、今夜の宿の冷池山荘が確認出来た。

「あそこまでいけば、とりあえず今日は終わり。」とみんなに(特にハヤテ)に激を飛ばす。

カレた道を一歩一歩。天気はいい、景色は絶景、緩やかに見える山容。されど、結構キツイ。元気な息子に煽られ空元気で、ようやく爺ヶ岳南稜。360度の眺望。鹿島槍ヶ岳

が大きく待ちうける。残念な事に白馬方面の稜線はガスのため見えず。少し、やな感じ。

目の前には爺ヶ岳の中稜と北稜。思ったより距離があるし、よく見ると今夜の冷池山荘は

もしかすると種池山荘より低い?

緑に浮かぶ2本の登山道。中稜とトラバースルート。

「せっかく来たんで、行かな。」と耳を疑うようなハヤテの言葉を合図に行軍再開。

一度50m程下り再び登る。2670mの中峰に到着。鹿島槍ヶ岳がグンと近くなる。

景色的にはあまり変化がないので、休憩もそこそこに北稜へ。

「何時まで続くんや、この爺は。しつこいし。トリプルやで。」

体感100mの下りと50mの登り。北稜直下を通過してガレ場を滑らないように慎重に下る。

確かにシツコイ。少しばかりウンザリしながら爺ヶ岳をトリプル爺(じじい)と呼ぶ事にした。

立山連峰 爺ヶ岳山頂

更に下ると標識があり数人が休息を取っている。冷乗越(つべたのっこし)、赤岩尾根を越え大谷川原への分岐だ。目の前にある冷池山荘は、まだまだ下り。しかも登りあり。

崖の上に立つ山荘直下の鞍部を抜け樹林帯を登れば、ようやく04年に改装されたという標高2410mの今夜の宿に到着。現在時間12時15分。所要時間約6時間だ。

時間的に余裕があるので、天気とハヤテの状況が良ければ今日中に鹿島槍ガ岳にアタックの腹積もり。とにかく、まずは荷物を下ろしてチェク・イン。

2年前に改装されたロビーは新しく綺麗だ。受付兼販売所に並ぶと前の人が予約してなくて若い姉ちゃんに叱られている。HPには5人以上要予約と書いてあったので、我々も当然予約はしていない。私の番になると、案の定叱られた。

「夏山では、予約が常識です。今度ご利用する時は必ず予約してください。」だと。

ノリヒコが横にいれば、反論するのだろうが、気の小さい私は「ハイ。」とだけ答えた。

ダメもとで、個室はないか?と尋ねると、何故か奥から男が出てきて「夏山は、個室はありません。」とキッパリ宣言された。

後からノリヒコが仕入れてきた情報では、200人のキャパで今日は300人宿泊予定らしい。6畳弱の部屋に12人。4枚の敷布団に6人という微妙な按配だ。しかも荷物置きの棚は片方だけ(幸いにも我々の方)だ。しかも、トイレ横なので心配したが、匂いは二重扉のお陰で事なきを得た。

なるべく部屋が満杯にならぬよう祈って、まずは昼食。これも恒例となったラーメンだ。

ストーブを抱え、玄関前の5mほどの高台にある展望広場にひと登り。

トリプル爺から下るおりには、ガスは既に鹿島槍にまとわり始めていたが、見える範囲(北東方面)はガスのため乳白色の世界。しかし、日差しは強くて、晴れているのに目的の山だけガスという状況は辛いものがある。小屋前の日陰のベンチは満杯で、風もなくうえ肌を焼きながらのラーメンは最高。思わず本日の山行を放棄して、ビールに走る。生ビール900円也。迷った末、缶ビール500cc700円を選択。味より量の貧乏人根性丸出しだ。弱いのに酒好きのリツコと乾杯!あまりの暑さにロビーの受付前にあるテレビ前の談話コーナー(長い板が2枚ずつL字状に置かれたベンチ)に移動。高級取りで子供がいないノリヒコは生ビール。リツコに輪をかけて飲めない彼は全部を飲みきれず、仕方なしに助けてあげる。「喜んで」を書き忘れた。

夕食 朝食

これもまた何時もの様に、酒に弱い2人とお子様はオネムの時間となり、布団に直行。

当初から予想されたことながら、2時から早や1人酒モードに突入。5時の夕食まで結構長い・・・。座りの悪いベンチから、玄関横の自炊室に移動。背負ってきたバーボンと、お絵かきセット。展望広場を何度も往復するが、絵の方はなかなか出番が無い。

夕方近く、爆睡から帰還したリツコと2人待ちわびた姿を現し鹿島槍のスケッチを始める。

初老のオジサンの感嘆(絵を書く姿に対しての)がむず痒いかったが、つたない絵心を満たす。

5時半に夕食。今夜は3回転。妙に愛想の良い兄ちゃんが駈けずり回る。ガスのため夕日を見ることなく、いよいよ朝まで爆睡モードに突入のはずが、12人部屋の人息の暑さで9時に目覚める。気持ちが悪くなってまだ灯りがある談話室で熱を冷ましていると、ハヤテが起き出してきた。一度外に出て星空を眺めるも、星降る夜空には至らず田舎の夜空程度。寝静まった小屋の中スタッフが仕事を終えそれぞれ部屋に向かうと、灯りが消える。

気持ちが悪い原因が、テーピング機能付きスパッツを履いたままなのに気づき、Tシャツにパンツというラフな格好でようやく夢の中へ。鼾と3時過ぎからの無礼な話し声に悩まされつつ朝を迎える。

4時半朝食。質素な献立を嘆きつつも、やけに愛想のよい給仕の兄さんにホダサレお代わり。去年と違い、息子も寝起きながら食べる。

日の出の時間を気にしながら出発準備。荷物は山小屋にデポし、最低限の荷物のサブザックを背負う。もちろんカッパは忘れない。

早々に山小屋前の広場に出ると、ギリギリ日の出に間に合った。雲が多めで、若干時間がかかったが、いつもながらにご来光はありがたい。快晴の中くっきりと鹿島槍の姿が浮かぶ。山の手招きを受けて、Am5:00いざ鹿島槍頂上へ。

御来光 布引山

5分ほど歩くと、テント場にでる。随分山小屋から離れ不便なことだ。夜のトイレはキツイだろうと余計な心配をする。南斜面で暖かな日差しを受け右側(東)に雲海に浮かぶ山並みを眺めながら緩やかに登る。途中小さな雪渓と池(水溜り)に出会うが、これはよもや冷池ではあるまい。今回は高山植物最盛期なので、色とりどりに目を楽しませてくれる。

残念な事にカメラのバッテリーの調子が悪く、写真に残せなかった。

布引山の麓に取り付くと、ハイマツの樹林帯になる。勾配は次第にキツくなりだす。

左右に視界が広がると同時に朝の冷気が遮る物なく襲いかかる。

振り返る景色がすばらしい。剣岳から続く立山連峰、昨日歩いた爺ヶ岳の三つの峰。

足元を見れば、岩ギキョウの紫が風に揺れている。

岩屑のピークが現れると、そこが布引山2683mだ。1時間20分のコースタイムのところを50分で到着。素晴らしい。

ここからの鹿島槍の双耳峰の眺めは圧巻だ。南稜と北稜の間の痩せ尾根に雪渓があり、空の青、山肌の茶色、ハイマツの緑、雪渓の白とのコントラストが絶妙で思わず頬が緩む。

少し下り、パノラマロードを登り始める。遮る物の無い緩やかな稜線は次第に傾斜を増す。

ハイマツがなくなり、岩肌剥き出しの岩礫帯を左右に、又してもハヤテの靴に急かされ息切れ切れに登る。風に運ばれて来る話声が急に大きくなると、そこが鹿島槍ヶ岳南稜頂上2889mだ。

布引山山頂からの鹿島槍ヶ岳 鹿島槍ヶ岳山頂

360度の眺望は素晴らしいに尽きる。眼下の痩せ尾根の先に北稜2842mがあり、その左は一気に400m落ち込む八方キレット。その先の稜線には、五竜岳のどっしりと構え、唐松、白馬三山に続く後立山縦走路が一望できる。振り返ると、爺ヶ岳の向こうに槍の穂先と穂高連峰。絶景なるかな、この世界。

北稜(2842m)は鞍部の雪渓を挟んで少し先にある。思ったよりも距離がある。

往復1時間。帰りの時間を考えると躊躇する。

下りだしの岩場がぐっとせり出し、視線の先にキレットの急斜面があり恐怖心を煽る。

鹿島槍北稜 後立山連峰

大学生のぐらいの兄ちゃんが縦走するらしく、折は降りはじめた。最初だけだとガイドブックに書いてあったが、その格好を見ていたら余計に怖くなった。子供連れという事もあって、今回はこの位で許してあげよう。

ちなみに、ノリヒコとリツコに「待っているから行って来てもいいよ。」と一応訊ねたら、

遠慮しておくとのこと。

オバハン団体の騒々しい声がしてきたので、我々も下山開始。

もともと下りを得意とするハヤテは絶好調で、雲ひとつない快晴のもと一気に山小屋へ。

槍穂高連峰 布引山と爺ヶ岳

またしても30分早く到着。デポしてあった荷物を受け取り、最終的に土産を物色しているとハヤテが腹減りでラーメンが食べたいと言い出した。朝の8時なんだが成長期は恐るべし。ラッキーな事に、恐ろしく高価な山小屋ラーメンは朝はやってなくって、カップ麺で落ち着いた。

8:20分本格的に下山開始。

と、いっても待ち受けるのはトリプル爺ヶ岳への登りだ。標高差200mは結構メゲル。

しかしながら登らねば帰れないので、必死こいて一歩を前に出す。

北稜を過ぎ中稜との鞍部のガレ場に看板が立っている。行きは目の前の冷池小屋に意識が集中していたのか、殆ど気にもかけてなかった。よく読んでみると、どうやらこの辺りはコマクサの群生地みたいだ。周りに目を凝らしてみるとあちこちに高山の女王と呼ばれる可憐な姿がある。まぁ実際は可憐というより弱々しく肩を寄せ合っているといった方がよく何処が女王なのかよく分からないけれど、あまり見たことがない。

トラバースするはずが、天気があまりにも良すぎるので再び中岳に上り景色を堪能する。

南の方角は少し靄っているのでハッキリとは見えないが南アルプスの奥に富士山らしき姿が。

冷池山荘 コマクサ

南稜を越え種池山荘へのなだらかな下りをゆったりと歩む。絵画のような牧歌的な景色は今回のベストショットかもしれない。

剣岳に別れを告げると、種池山荘に着く。休息後、美味しい水を100円で補給して10;30分扇沢へと下り始める。

暑さに喘いで登る人々に余裕の挨拶をかけ、途中雪渓で季節外れの雪合戦を楽しむ。

後に、ノリヒコとリツコから「休まないのかなぁ?」「あの親子は下り得意だから、ないんじゃない。」という会話があったと聞いた。

目標1時間半だったが、2時間40分を、40分短縮のが精一杯だった。

12:30分無事登山終了。

2年前の剣の帰りに入った食堂での惨敗に恐怖しながら、蕎麦屋に入る。信州は苦戦続きだ。山菜天ぷらは美味かったが、ソバは固かった。腰が強いのと固いのは違うと思うが、イマイチ。うどんは美味かったらしい。でも違うだろう。

大町温泉で汗を流し、帰路に。

花盛り人盛りの山旅だった。そして何より子供の成長に驚く山旅で、父の威厳はいつまで保たれるのか心もとないのである。

文、写真

志摩お山歩倶楽部 竹内敏夫